8000系修繕工事の始まり・初期修繕車
 修繕工事が始まった1986年前後を見てみると、東武鉄道は特に通勤電車が大きく変化していた時代だなと感じさせられます。
 それまで主力通勤電車として長年に渡って製造されていた8000系に変わり、1981年に先行試作車が既に登場していた地下鉄有楽町線乗り入れ対応の9000系(量産編成は1987年に増備)や1983年12月から東上線に最初に投入され(8両固定)、次いで本線用(6・2両固定)が投入された当時の地上用通勤電車の最新形式・10000系が増備されるようになりました。
 更には、78型シリーズに8000系の車体を乗せて新しく誕生した5000系列も続々誕生し、1984年には5070系が誕生しています。そして増備が終わった8000系でも1985年9月以降にそれまでの地味だったセイジクリーム1色の塗装から現在の塗装への変更が始まっており、既存・新車の両方から通勤電車の輸送力増強+イメージアップを図っていたと言えます。

 そんな中10000系は毎年増備されていたが、あの広大な路線の輸送をまかなうには当然の事ながら8000系の活躍がまだまだ期待されていました。しかし、8000系も初期の編成では既に就役から20年以上が経過しており車体や車内に傷み・老朽化が目立つ様になっていました。

 そこで、1986年3月から車両の延命化+サービス面での向上+イメージアップに対応すべく8000系の修繕工事が西新井工場で開始されました。(1986年当時の記事を見ると既に今後20年に渡り年36両ペースで修繕工事を行うとありました。)
ここで主な改良点を以下に示します。


※未修繕車の画像ですが、既に幕がLED化された時点での画像になってしまいますが、ご了承下さい。

〜車体〜

1.屋根は従来塩ビシート張りだったものを、ローンテックスの塗り屋根とし防水性を向上させました。
  塩ビシートも防水性が悪い訳ではないのですが、施工が難しくどうしても薄いシートで防水する関係で性能には限界がありました。そもそも20年も経ったら防水は劣化の関係でやり替えしないと根本的な解決が難しい所もあります。
2.外板、主要鋼材等の鋼体で傷んだり、腐食した部分を広範囲で補修したり新しい部材に交換する。
3.外板塗装を総剥離し下地の補修完了後に再塗装(剥がして、パテ処理を行った後新たに塗装し直し。結局下地がダメだと塗装仕上げも良くなりません。)
4.運転席窓下にある通風孔を撤去。(不要になった為)
5.前面上部の表示灯の撤去。ここの取付箇所が漏水の原因ともなっていたそうです。この修繕工事と平行して既存車両の撤去も開始されていきました。
ツートン8108Fのはレプリカです。現在は8000系の未修繕車で見れます。8104Fで撮影
※以前ならほとんどの電車に付いていたと思います。78系・3000・5000・6000・8000系列・1800系にも付いていました。他社でも有名な101系・103系にも付いていました。何故窓下に通風孔を付けたか、知り合いの話だと窓の曇りを防ぐために風を通す穴があったらしいです。修繕工事後は、前面にヒーターを内臓し窓の曇りを防ぐ処置が施されたため通風孔が撤去されたと言われています。

〜車内〜

5.室内化粧板の模様替え(サーバスアイボリー→薄いクリームを基調とし10000系に似せた)
6.床材の色と材質変更(アロンフロアリング(緑)→ロンリウム(茶))
7.座席シートの色の変更(コロラドオレンジ→ライン入りのグリーン)
※座席のモケットの変更が1986年9月からだった為、当初8104Fには修繕時に施行されなかったが9月から未修繕編成も含め順次グリーンの座席に変更されています。
8564Fで撮影8104F撮影
8564F撮影8104F撮影

8.ドアの窓ガラス支えの変更(黒Hゴム抑え→アルミ型枠抑え)
※側窓枠の強化の為で、未修繕車も順じ変更されました。81103F以降は当時の新車含め窓固定方式が異なるので対象外です。
9.冬期の保温の為に、中間連結面の妻引戸を増設(モハ8200・モハ8800形)
※6両固定編成時に増設された(サハ8700形)妻引戸と違い、塗装無しのステンレスHL仕上げとなっています。
8104Fで撮影8104F撮影 10.非常列車停止装置(ヒモ式)から非常報知器(ボタン式)に変更し、場所も運転席背面側になりました。
ひもです。引っ張らないように位置が高くて押しにくいような…?
※修繕当初は圧倒的に未修繕編成が占めていた為、これらの編成と併決時にこの装置を使用すると未修繕側の仕様で即非常制動扱いとなる様にされました。
 6050系更新車の誕生時期でありこちらも同様に6000系と連結時は取り扱い即非常制動となっています。

11.中間扉締め切り時のドア上にあるランプの形状が変化
8564Fほとんどの8000系はコレになりました

12.車外側にも戸挟み防止ゴムが設置された(注:修繕第一編成の8104Fのみ修繕車で唯一未設置)
8104Fで撮影ほとんどの8000系はコレになりました
※尚、車外側戸挟み防止ゴムは1976年度以降新製車から既に設置されており、修繕工事第一陣の8104Fのみこれが最後まで未設置でした。

〜艤装・その他〜

13.新造時のままとなっていた電動車の高圧回路の配線引き替え
14.床貫通の空気配管をステンレスパイプに取替え(防食構造)
15.年間を通して通風制御が出来るように回路の変更を行い、窓を閉め切る冬期混雑時にも室内換気が可能となりました。
16.自動巻き取り式の側面幕の新設(正面の幕も手動だったものを自動巻き取り化)
昔はここにサボを入れていたようです現在では方向幕が普通となっています

17.また各車両に押しボタンを設け操作によって乗務員にはブザーと表示灯による通報、車外側にも表示灯が点灯する非常報知器新設の伴い側面の表示灯が2段になった。
1段2段
※修繕当初は圧倒的に未修繕編成が占めていた為、これらの編成と併決時にこの装置を使用すると未修繕側の仕様で即非常制動扱いとなる様にされました。
 6050系更新車の誕生時期でありこちらも同様に6000系と連結時は取り扱い即非常制動となっています。

18.各表示灯が白熱灯から長寿命のLED(発光ダイオード)化されました。
19.10000系や6050系更新車同様に、車掌室側にワイパーが新設されました。(保線関係社員等の添乗時に雨天でも視界確保の為)
20.車両の長編成化に伴い、扉の開閉を自己復帰型の車掌スイッチに変更。(8167F以降改良されていたもの)
※リレーにより回路を入り切り出来るように改良し、新たに中扉締め切り装置を改良した事で、乗客の動きを見ながら中扉の操作が可能になりました。
21.車外灯、ATS表示灯、尾灯など各種表示灯を白熱灯からLEDに変更。

大規模修繕施工トップナンバーの8104F
最初に修繕工事が施工された8104F


 以上の様に後々の修繕車から見ればメニューが少ないと思いつつ、細かく見ると様々な点で改良が行われました。何せ一番最初の修繕となるのでとにもかくにも腐食部の確認とそれに対する対応方法が最も検討されたと言えます。その中においても当時の更新工事車や新車の新機軸を取り込むといった動きも取られています。
 これが1986年度以降の8000系修繕工事の基礎・基盤となる内容です。これ以降の修繕車はこのメニューに更に項目が追加されて改良されていきます。

 尚、上記以外に変更点等見落としがございましたらご一報頂けるとありがたいですm(_ _)m
※一部説明文に対して画像がご用意出来なかった項目がありますがご了承下さい。

 初期修繕車は2011年6月で東上線に最後まで残っていた8111編成が引退し、営業運転から引退しました。8111編成以外は全車解体されてしまいましたが、8111編成は復元されて保存されています。

1986年度修繕編成()は最終所属を記載しております。
4両固定:8127F・8130F(いずれも南栗橋車両管理区春日部支所)
6両固定:8104F(南栗橋車両管区七光台支所)・8108F・8111F・8112F(8104F以外は森林公園検修区)
2両固定:8509F・8516F(いずれも南栗橋車両管理区春日部支所)
※動態保存車である8111Fは現在南栗橋車両管区春日部支所に在籍。

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