東武8000系紹介 | |
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就役から40年以上経っても東武鉄道において最大勢力を誇り、ほぼ全ての路線で主力として活躍する東武鉄道8000系電車について基本的な所から説明します。 ※前回の説明文が大分古くなってしまったので改変してます。 東武8000系を説明する上で、わかりやすく言えば 40年以上も全車両が廃車なしに東武の輸送を支え続けた 昭和に始まり、令和の現代に至るまで東武鉄道の輸送を支え続けているのですがやはり大きなポイントとしては私鉄の1系列で最多の712両を製造された事と、もう一つは私がこの車両にのめり込む要因となったとこですが40年以上も全車廃車無しという所だと思ってます。 ![]() ↑大手私鉄・東武鉄道のほぼ全ての路線で走行している8000系電車。 ![]() ↑就役当時はこんな姿でした。更新後と色も顔も全く違います。 (※これ自体も8000系旧塗装のリバイバル列車で、実際とは一部異なります。) 東京の都心部から埼玉・千葉や北関東一円に広がる広大な路線網を持つ東武鉄道。その東武鉄道の地上用としては初めての高性能通勤電車として今から50年以上も前の1963年(昭和38年)11月より東武東上線、伊勢崎線で就役した当時の新型通勤電車、それが東武8000系です。 それまでは片開き扉に床が板張りの7300系・7800系(73型・78型)や戦前から走るいわゆるデッカーと言われる17m級の車両達が通勤輸送の主力となっていて、迫り来る高度経済成長期を目前に控え輸送力増強と利用者に対するイメージアップも兼ねての登場となりました。 なお8000系が就役する1年前に東武鉄道では地下鉄日比谷線との相互直通運転開始により悲願の都心乗り入れを実現しましたが、その乗り入れに対応した2000系電車が東武鉄道初の高性能通勤車両として登場していました。2000系電車は乗り入れ協定から東武では主流だった20m車体ではなく18mの短い車体での誕生となりましたが、両開き扉の採用によるスムーズな乗降車、オール電動車による高加減速の実現など様々な新機軸を採用した車両です。8000系は2000系で採用された面を取り入れつつ、20m車体で製造され高度経済成長期を控えていた時代に低コストで大量生産出来る車両として誕生しました。 8000系は当初、4両固定のみが製造され旧型車らに優等運用をまかせて各停運用などに入りました。当時は前述した片開きの73・78型が主に4両で運転(最長で増結による6連)されていたので、ドアが両開き・4扉20m車の8000系投入によるラッシュ時の効果は大きく、更に8000系投入で旧型車による6両運転運用も増やせました。 次年度からは8000系でも6両運転を行えるように2両固定編成(通称:8500系)が製造されました。また2両固定はその身軽さから支線でも使われ始め次第に勢力を拡大してゆきます。 昭和47年からは6両固定編成、昭和52年からは8両固定編成(東上線専用)など長編成化にも対応してゆき最終的には2・4・6・8両固定が製造される事になります。 高度経済成長の時代の影響で沿線の利用者が激増し、その輸送に対応したダイヤ改正を何度も行います。ダイヤ改正が行われる度に8000系が増備され、8000系の増備にあわせてダイヤ改正が行われるといった状況です。 8000系は当初は非冷房で製造されましたが、時代のニーズに合わせて昭和47年6月から冷房付の編成が登場し、それと並行して非冷房車の冷房化改造も順次行い昭和50年代頃には冷房車が主流となりました。このように様々なマイナーチェンジや改良を経て約20年間で最高197編成・712両が製造され、私鉄の1形式ではダントツのトップとなりました。鉄道全体で見ると3500両近く製造された国鉄103系がトップとなっているので、私鉄の103系と呼ばれたそうです。 ![]() ↑8000系未修繕の車内。就役当時から見るとシートモケットの色など変更点もあります。 8000系の車体は、鋼製ながら当時ではかなり軽量化されており1世代前の78系よりも1両で4〜5tも軽量化されています。当時登場した鋼製車両の中では最も軽い車両としても謳われました。その後前述した78型も東武鉄道が得意とする車体乗せ代えによる更新工事工事が行われ5000系列として生まれ変わりました(既に全車廃車)。 その5000系列は8000系と同じ車体を採用しぱっと見ただけでは見分けが付きにくかったです。保守作業の統一化もありますが、その車体の完成度の高さが伺えます。また78型の更新に先駆けては、17m級で戦前から活躍する旧型車両(当時はデッカーと呼ばれていました)であった32型や54型、53型・58型等にも同じ様な車体乗せ代えによる更新工事を行っています。この時に採用された車体はやはり8000系と同一のものでした。ただしこれらは車体長が18m級だったので既に18m級では2000系が登場していたのでこれの車体を採用しつつ、前面は8000系と同じものを採用した車体となり3000系列として長年活躍してきました(既に全車廃車)。 この様に一時期、特に5000系列の更新が終わる頃の昭和60年頃になると全く東武8000系と同じ顔、同じスタイルの車体の電車が広大な東武線上を走っていたと言う事になります。 ある意味究極の画一化という時代の影響もあってか東武8000系の原型顔が今も“東武顔”と呼ばれている由来だと考えます。(近年では丸目とかいろんな呼び方がありますね) 長期に渡って活躍している8000系ですが電車で一番目につく車体の塗装も2度変わっています。最初はインターナショナルオレンジとロイヤルベージュのツートーンカラー(一番上から2つ目の画像参照)でしたが、増備される過程で塗装費用などを抑える意味でセージクリーム1色の塗装が採用されました。昭和49年増備の車両からはこの色で登場し、既存のツートンカラーの車両も全てこの色に塗装されました。 ![]() ↑経営の苦しい時代に塗装工程の短縮化などの省力対策で誕生したカラー。 ※シュガートレイン様の撮影・ご提供です。無断転載はご遠慮下さいませ。 また増備も終了した1985年後半頃からはイメージアップの意味を込めて現在のジャスミンホワイト下地にロイヤルブルーとリフレッシュブルーのラインの入った塗装に塗り替えられました。現在では全編成がこの塗装となっています。 ![]() ↑現在は皆様周知のこの塗装になっています。 8000系は車体がかなり軽量化されたため、客が大勢いる満車時と昼間の閑散時では荷重の違いによる床面の高さの差が顕著だったため、当時の通勤車両としては異例とも言える枕バネが空気バネとなっているミンデンドイツ台車が採用されました。現在でも昭和に製造された8000系の乗り心地が良いといわれる大きな要因と言えます。 ![]() ![]() ↑上が標準ミンデン台車・FS-356/056 下が昭和51年度以降の新車で採用あれた車体直結S形ミンデン台車・FS-396/096 更に8000系は抵抗制御ながらこれまた当時画期的であった超多段(56段)のバーニヤ制御を採用し、加速時の揺れをほとんど感じさせない究極の抵抗制御車両といえました。 その他に特筆される変化と言えば1970年の8152編成からは不燃化構造(運輸省新A様式)になり、1976年度新造車からは台車が車体直結のS形ミンデン台車に変更されました(上にある写真を参照)。この台車外観がかなりすっきりしており全くの別の台車に見えますが、乗り心地に大差はありません。更にドアの内部側の塗装が省略されたため車内の印象が若干変わりました。更に床はそれまでの鋼板を張っていただけの構造から、キーストンプレートを張った構造に変わり保温効果を向上させています。 1980年度新造車は、側面のドアの窓ガラス抑えの支持枠が目立たない押さえ金具式となり外観がスッキリとしています。 更に1981年度〜83年度に新造された編成と1982年以降に冷房改造された編成はMGがサイリスタインバータ装置を介して三相交流電流により稼働する事で消耗部品を減らしたBL-MG(ブラシレス電動発電機)に変更されたりと時代に合わせて近代化もされています。 この様に、長期に渡って製造されたために年度ごとに若干の違いがあり鉄道ファンからすると興味深い車両と言えるでしょう。 尚20年にも渡り増備され続けた結果、車両の番号が5桁になる車両が誕生する事になります。 ![]() ↑1979年に製造された8199Fの下り方4両から5桁ナンバーに突入した。 80000系ではなく、8000系の100番台と呼ぶのが正しいみたいです。 さらに、1986年から製造から20年以上が経っており老朽化が目立ってきた8000系にたいして大規模修繕工事が施行されました。 8000系の第二章の始まりがこの修繕工事の開始と言えると思います。 これについてはこちらのページをご参照下さい この修繕工事によって老朽化した各種設備、車体の若返りを行い、この時に前面形状も変更され現在のスタイルになっていきました。 内装設備や床下機器も各種更新するなど昭和中期製の8000系を出来るだけその時代の新車に近づける内容が盛り込まれています。この大規模修繕工事は東武8000系と同時期に大量増備された国鉄(JR)103系電車の各種延命工事、保全工事の参考にもなったようです。 ![]() ↑1987年度以降に修繕された編成は前面が大きく変化しました。 1997年度に修繕工事した編成は、更新内容が大幅に変更され行き先がLED(発光ダイオード)式になったり、前照灯がHID(高輝度放電式)ライトに変更されるなどのマイナーチェンジが行われた。更に2002年には東武鉄道初のワンマン運転対応編成が8000系の修繕車にて誕生しました。 この頃になると8000系の後継である10000系列といった新車が増えるに連れ、ローカル線や釣り掛け電車の置き換えの為に8000系が充てられ、首都圏の路線でありながら吊り掛け電車が多く残っていた野田線にも進出し始めました。 ![]() ↑1997年度修繕車から表示機のLED化等、大幅にマイナーチェンジされた。 8000系は基本の設計段階から長期間使用する事やどの路線でも使える事を考慮し、保守に優れた使いやすい車両であった為、製造から41年間廃車がありませんでした。しかし、2004年に8両固定編成から3両固定編成を2本製造する際に不要となったサハが廃車にされ初めて8000系の廃車が発生しました。本格的な編成単位での廃車は2008年1月からでそこからは新型50000系列の投入と平行する様に廃車が進み2010年12月にはついに総数で10000系列の486両を下回りました。 8000系は編成数の多さからインフレナンバー(80000代)が誕生しましたが、2006年改正で館林地区のローカル路線のワンマン化拡大の際に8000系8両固定編成を種車に東武鉄道では初?となる3両固定編成が誕生しました。既に8900形まで番号が割り振られていたので、見た目は8000系ながら800系・850系という新しい形式を採用する事となりました。 3桁の番号は有名な東武を代表する特急スペーシアの100系から使われていますが番号の振り方はこれらと同じ様になっており、3桁の編成番号と車両番号を表す為に−(ハイフン)が使われているのも特徴です。4桁の8000系と見比べるとインフレナンバーならぬデフレナンバーと言われファンの間で話題になりました。 ただこの3両固定編成が誕生する過程で東武8000系初の廃車が発生しています。 ![]() ↑3両固定に改造の際、8両固定編成の中間2両のサハが廃車されました。 ![]() ↑3両固定編成。形式は800/850系ですが、8000系から枝分かれした別番台と言える存在。 以上、非常に簡単ですが紹介させて頂きました。何せ情報量の多い形式ゆえに別項目で記載しているものもありますので一部の紹介となる事をご容赦願います。 なお、当サイトでは東武8000系の画像を展示したり、8000系に関する様々な話題を調べて公開しています。東武8000系に興味のある方は是非御覧いただいてほしいと思います。 |
東武8000系主要諸元表(分かる範囲で) | |
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車体寸法(mm) | 長さ:20000 幅:2850 高さ:4045(パンタ上昇時:4200) |
電気方式 | 直流1500V |
制御方式 | 抵抗制御(直並列制御、誘導分路式弱め界磁制御併用) モハ8200形、モハ8500形、モハ8800形、モハ800-2形、モハ851-1形に主制御装置(下段参照)、主抵抗器(自然通風冷却式)搭載 |
制御装置 | バーニア(超多段)式電動カム軸式制御装置 (応荷重装置、高速度限流器付) モハ8200・モハ800-2・モハ850-1:VMC HT-20A →モハ8200とモハ8300、モハ800-2とモハ800-3、モハ850-1とモハ850-2 の計8個モーターを制御する1C8M制御 モハ8500・8800:VMC HT-10A →各形式の1両4個モーターを制御する1C4M制御 力行ステップ:弱め界磁起動(段流投入)1段+直列24段+直並列渡り+並列21段+弱め界磁9段(制御段数計55段) 主幹制御器力行用3ノッチ 1ノッチ:弱め界磁起動・直列1段まで 2ノッチ:直列制御最終段まで 3ノッチ:並列制御・弱め界磁最終段まで |
ブレーキ | 電磁直通空気ブレーキ(HSC)+保安・抑圧(耐雪)ブレーキ付 ※非常ブレーキは自動空気ブレーキ方式、発電制動無し 基礎ブレーキ:抱合せ式踏面ブレーキ 制輪子は合成制輪子(レジンシュー)を使用。※鋳鉄製への交換可能。 |
主電動機 | 直流直巻整流子電動機(補極・補償巻線付) ※最大弱め界磁率30% モハ8200・8300・800-2・800-3・850-1・850-2→TM-63形: 1時間定格出力(82%界磁)130kw×4個/1750rpm、端子電圧375V、定格電流390A モハ8500・8800→TM-64形: 1時間定格出力(82%界磁)130kw×4個/1750rpm、端子電圧750V、定格電流195A 限流値(TM-63形):(空車時)490A、(定員時)575A、(満員時)660A |
台車 |
2軸ボキー形軽量高速台車(軸箱支持方式:ミンデンドイツ式) 軌間:1067mm 初期(標準ミンデン台車):住友金属FS-056T/356M (東武形式:TRS-62T/62M) 軸バネ:コイルバネ 枕バネ:3段ベローズ空気バネ 後期(S形ミンデン台車):住友金属FS-096T/396M (東武形式:TRS-75T/75M) 軸バネ:エリゴバネ 枕バネ:ダイヤフラム形空気バネ(住友金属スミライド) |
歯車比 | 16/85(5.31) |
駆動方式 | 中空軸並行撓み板接手駆動方式(駆動装置:TD-63) |
車体構造 | ノーシル・ノーヘッダー構造全金属車体(準張殻構造)+外板塗装仕上 |
自重 (冷房化後) | クハ8100形:26.0t モハ8200形:38.0t モハ8300形:39.0t クハ8400形:26.0t モハ8500形:38.5t クハ8600形:31.5t サハ8700形:32.0t モハ8800形:38.0t サハ8900形:28.0t クハ800-1形:26.0t モハ800-2形:38.0t モハ800-3形:40.5t モハ850-1形:39.5t モハ850-2形:39.0t クハ850-3形:26.0t |
集電装置 (現在) | PT4815-A-M(集電板はブロイメット) モハ8200・800-2・850-1形:2基 モハ8500・8800形:1基 |
電動発電機 (冷房化後) |
1:CLG-350D(8300形・800-3形・850-2形) モーター側:4P-150KW(入力)-1800rpm-1500V-100A 発電機側:4P-140KVA/60Hz/220V/367A 2:CLG-355(8600形・8700形) モーター側:4P-80KW(入力)-1800rpm-1500V-53.5A 発電機側:4P-75KVA/60Hz/220V/197A 3:CLG-703(8300形/ブラシレスMG) 発電機側:4P-140KVA/60Hz/220V/368A 4:CLG-704(8600形・8700形/ブラシレスMG) 発電機側:4P-75KVA/60Hz/220V/197A |
電動空気 圧縮機 |
1:C-2000N(8300形・8700形):1500V-11A-1200rpm-2,070ℓ/min 2:D3-F-R(8600形・8700形):1500V-4A-1100rpm-990ℓ/min 3:HB-2000CA(8300形・8600形・8700形):1500V-?A-?rpm-2,070ℓ/min 4:HS-20C(8300形・8600形・8700形):1500V-10.4A-1400rpm-2,130ℓ/min |
冷房装置 | RPU-3002形(一部低騒音タイプのRPU-3002A形) 能力:10,500kcal/h(1台),42,000kcal/h(1両) 冷媒:(当初)フロンR22(CHClF2) (現在)ノンフロンタイプへ更新 電源:3相交流220V,60Hg及び制御用単相交流220V,60HG 重量:250kg/台、1t/両 |